1
「君達はこれから隔離区域に行くわけだが入る日にちが同じだけであって必ずしも出る日にちも同じというわけではない。この意味がわかるな?」
ーーーなるほどね。
入る日はその月に生まれた十六歳全員だが、出るときは自分が生まれた日ってことか。今月十七歳の誕生日を迎える事となる彼は、十六歳の群衆の中、その軍人の説明を心の中でそう咀嚼した。
「開放日にまたココに…もっとも、君たちが集合できるのはこの壁の向こう側だが…そこに集合してくれれば、認証後、隔離区域からの解放を許可する。日時は正午だ。」
「そんなこと言われたって、こんなパラダイスみたいなトコから帰りたい奴いるのか?」
「だよなっ!!」
隣で、同じ隔離区域に入域する十七歳が笑いながらそんな話をしている。その時、彼はあることに気づいた。
(…1、2、…6、…11人?)
「もしその日に、集合できなかったらどうなるんですか?」
彼の隣の十七歳が説明をしている軍人にそう訪ねた。
「その日より30日以内ならば毎日正午に解放をすることができるが、それ以降その者が現れなかった場合はコチラで処理をさせてもらう。」
「処理って言うのは?」
「それは中にいる【先輩方】にでも訪ねるんだな。」
彼は、妙に含みを持たせる軍人や入域に対してのさまざまなコトに違和感を覚えたが、それ以上の質問をするものはいなかった。彼自身、ズボラで面倒なことが苦手な人間だったので質問をすることもなかった。
一通りの質疑応答が終わったと判断した軍人は、「それでは、一年間頑張りたまえ」と最後に付け加えると、その日常と隔離区域を分かつ、分厚いコンクリート壁に備え付けられた門のボタンを押した。
ズズズズズ…
重々しくゆっくりと開くその扉を見ながら、地獄の門はきっとこんな感じなんだろうな…と彼は思った。
2
入り口の扉の向こうがすぐに「隔離区域」というわけではないらしく、そこには12畳ほどの部屋があった。
「各自の持ち物をチェックをする!許可が下りた者から順にそこに並んでいる服に着替え先に進むように。」
さっきとは違う軍人がその一室には待機しており、そう指示をしてきた。その軍人の後ろにはライフルを抱えた軍人がさらに10名。
警備の厳重さに彼は違和感を覚えたが、質問することは許されずそこでは受動的にその指示…いや「命令」に従うしかなかった。
なぜなら先ほど、食ってかかった十七歳の一人がライフルの柄で突かれ意識を失うという出来事があったからだ。
部屋に入れられた十七歳たちは、緊張感を漂わせ、ただただ軍人の指示に従っている。
彼はというと、特に何も持ち込む予定もなかったので、手ぶらだった為、すんなりと着替え組へ通された。もっとも更衣室などの個室がもうけられている訳ではなく、部屋の隅にもうけられた簡素な棚に着替えを置き換えるだけのプライバシーなどない場所だったが。
女性もいたが、全員がそこでの着替えを命じられていた。言い知れぬ緊張感と屈辱感からかすすり泣く声も聞こえる。
持ち物検査では、ほぼすべての物を持ち込むことが禁止されていた。
携帯電話をはじめ、ノートパソコン、家電、ゲーム、工具などもすべて没収されていた。
全員の着替えが終わるとさらに奥にある扉の前に通される。
「ここから先が隔離区域だ。それでは1年間がんばって共同生活を送り社会に出る為の協調性を学んでくれたまえ。」
門に入る前に似た言葉をこの軍人も言放つ、きっとマニュアル化された消費されるだけの言葉なのだろう。その言葉に意味などなく、ただ感情なく言い放たれる無機質なエール。彼がそんなことを考えていると扉は完全に開ききっており、かつて「東京」と呼ばれた町が目の前に広がった。
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