月の詩
十七歳隔離区域
第二十三章  「開戦」
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世が明ける。
運命の朝が来る。
戦うべき時が訪れる。

「各自配置についているな?」
イヤホンマイクから聞こえてくるのはツーの声だった。
「全員準備 OKだ! こっちからバッチリ確認出来てるぜ!」
ツーの言葉に応える用に聞こえて来たのは電王の声。電王が改造した携帯電話にはGPSが内蔵されており彼のモニタには隔離区域全員の場所が見て取れる。そこから軍隊の動きを観察し、各々に的確なナビゲートをするのが電王の役目だ。

「…やつらは今んとこ正面入り口だけだな。一応衛星画面からチェックしているがヘリや航空機の表示は今んとこない。正面に留まってる車の数は 10台ってとこだ。 20人くらい収容できるとして、向こうは 200人程度ってことだな」
電王がモニタを見ながら、情報を伝える。

「ギー。回線のハッキングは出来てるか?」
電王は情報を伝え終った後にギーにそう問い掛けた。
「オッケーだよ。いつでも流せる」
ギーからはそう返答が戻ってくる。

「よし、じゃあ作戦スタートだ!」
電王がそう言葉を発した。

*** *** ***


「大佐! 無線が何かを傍受しました。隔離区域内部からです!」
「わかった。こっちにも聞こえるように流せ」
軍が設けた隔離区域前の駐屯地。バイオハザードに備え二次感染を防ぐように防護服に身を包んだ兵士達がそんな会話を繰り広げている。大佐に命令された男は無線機をチューニングするとメッセージが流れ出した。

「これは、真実を伝えるための言葉である。この声が真実を証言してくれる人間に届くことを願う。…この声が真実を証言してくれる人間に届くことを願う…」
そう始まった隔離区域内から発進されている声明文は、要約すればこうだ。
アメリカの陰謀によって隔離区域内の人間は遺伝子操作され産まれてきたものだということ。彼らは人体実験の為に作られたということ。そして、この情報が世界に知られることを畏れ、隔離区域をバイオハザードという名のもとに壊滅させようとしていること。そしてこの声明文は世界各国のメディアに向けて発信されているということ。証拠の品としてハッキングして得たあらゆる資料も添付されているということ。

「…大佐…これは本当なのでしょうか?」
傍受した軍人は戸惑いを隠しきれないといった様子でそう言葉を発する。
「…さぁな。真実かどうかは我々の行動には関係ない。上層部からの作戦変更の指示がなければ予定通り決行する。全軍に伝えろ。中の人間はコチラの情報を得ている畏れがある、警戒レベルをCからBに繰り上げて編隊を組むように伝えろ」
そう言うと大佐は指揮を取りに持ち場へと戻った。

この声明文発表はRealの作戦だ。反米の国や人やメディアがこの言葉を受信した時何か動きがあるかもしれない。もしかしたら合衆国に取り込まれた日本州の誰かも動いてくれるかも知れない。そして、この声明を傍受した軍人たちの中には必ず疑問や不信感を持つ者が出てくる。それが付け入るスキとなる。
実際、その読みは当たっていた。犯行声明を聞いた軍人達に動揺が走ったことは容易に見て取れた。しかし指揮官クラスの人間は意に返さずといった様子で任務遂行の準備を進めていた。おそらく位の高い人間はこの心相を既に知っていたのであろう。
先程大佐と呼ばれていた軍人の防護服に備え付けられた無線が専用回線の受信を知らせる。

受信を許可すると案の定、上層部の人間からであった。
「何をしている! はやく突入して殲滅しろ! 国の威信に関わる問題になるぞ! このままでは我が大国は世界的にバッシングを受けることになる!!」
「…まだ、作戦開始時刻ではありません。そもそも自業自得というヤツなんじゃないんですか?」
「黙れ!貴様に発言を求めているワケではない! 軍人は軍人らしくこちらの指示に従え!」
そう、一方的に怒鳴り散らすとアクセスしてきた相手は一方的に回線を切った。

「…やれやれ」
ため息交じりにそう呟いた軍人は各人に進軍の指示を出した。