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「確認できた。数は38人。」
ツーはそう小声でイヤホンマイクに言葉を囁く。
「オッケー。取りあえず作戦通り行こうか。こっちは準備万端だよ!」
そう返答する声の主はRealだ。
二人は電王からの連絡を受け、二手に別れる行動に出た。陽動と陰動とに分割したのだ。
陽動はツーが買って出た。ツー曰くトラップを仕掛ける腕はRealの方が上だそうだ。
二人が潜んでいたのは学校の校舎内。軍隊は正門から昇降口前を探索していた。
パキッ。
不意にツーが音を立てる。軍隊は聞き逃さず音のする方向を見やる。
「隊長!」
兵士がそう叫び指さした先にはツーの姿が確かにあった。しかしその姿を確認出来たのは一瞬で、ツーはすぐさまその身を隠した。
「わかった。私も確認している。…α隊は私とついてこい。β隊はさらに二つに隊を分け昇降口を固めろ!」
隊長と呼ばれた軍人はそう指示を出すと、今度は無線の回線を変え各隊に情報を伝える。
「レオパルド部隊。目標らしき人影を発見。直ちに確保及び制圧に入る場所はB-6地区。学校の校舎だ」
連絡を終えると隊長の部隊は校舎内へと潜入をはじめた。
「ツーの陽動に引っ掛かったのは半数ってとこだ。他のは出入口を固めてる。進入してくるのは東の昇降口だ。Real…大丈夫か?」
衛星から現状を観察している電王からのメッセージ。
「問題ないよ。」
Realは言葉少なにそう答えると、理科室の脇にある準備室から行動を開始した。
ーーー人影を確認したのは、3階だった。このまま階段を駆け登るか?
レオパルド隊の隊長は迷っていた。
彼らが交戦の準備をしているとしたら、このままあの人影を追うのは相手の術中に嵌まることを意味する。しかし、あの人影が偵察の人間だった場合は敵本隊と合流する可能性が高い。
ここが学校であるかぎり出口は面だけではないだろう。
要するに裏口さえ抑えればあの人影は確保できる。
そう結論を出すと大佐は、α隊から5名を選出させ裏口を探す様に命令を下した。
理科室は三階にある。そして三階に上がるまでには、Realの仕掛けた無数のトラップが作られていた。
トラップの発動音と叫び声、人が倒れるような音が等間隔で近づいてくる。
最後の合図用のトラップが発動したのはそれから暫くしてからであった。
ガラガラ…バタンッ。
最後のトラップの発動により理科室の扉が締まる。
α隊は三階に上がるまでに4名の兵士を失ったがそれでもまだ二ケタの兵力を所持している。
隊を二つに分け、理科室の手前と奥の両方に布陣する。
扉を開けて中に展開すると、そこは真っ白な世界だった。室内を覆うように白い粉が視界を塞ぐ。
ーーー煙幕か。
銃を構え、次の動きに対処する兵士達。
その時。手前の入り口奥に人影が動いた。
兵士達の神経は疲弊していた。三階に上がるまでのわずかな時間を無数のトラップで阻まれ姿の見えない敵を探す。はじめて間近に見る人影に兵士は銃口を向けトリガーを引く。
「まてっ!!」
隊長があることに気付いて制止しようとするが、それは間に合わなかった。
隊長が気付いたのは煙幕が煙ではなく「白い粉」だと言うこと。足下をみると床が水浸しであるということ。
それが何であるか悟ることは出来なかったがこれが罠であることを直感的に悟った。
だが、隊長の制止は間に合わず、兵士はトリガーを引いてしまった。
刹那。
銃口の火花が白い粉に引火しバーンアウトする。
理科室はガラスを、扉を吹き飛ばし大爆発を起こした。
粉塵爆発だ。
煙幕のような粉の正体は「小麦粉」であった。その小麦粉が銃口の火花に引火し、空気中の酸素で一気に燃え上がる。それが一瞬にして部屋を満たしていた全ての粉に引火する。個体が気化するとその体積は何百、何千と膨張する。その結果爆発という現象を起こすのだ。
更に、床一面にまかれたのはアルコールランプの液体であり、爆発と共に一気に燃え広がり一面を火の海に変える。
レオパルド部隊αチームは壊滅した。
ゴトン。ゴトン。
偶然にも爆発の引き金となった兵士の脇に何かが鈍い音を立てて転がってきた。
薄れ行く意識の中、兵士は目を細めながらそれを見る。
ーーーなんだ。俺はこんなものにビビッて引き金を引いたのか。ははっ。とんだチキンヤローだな。
兵士の目線の先にはボロボロになった人体模型の生首が火の海の中でコチラを見ていた。人体模型の生首には自分が狙い通りに的を仕留めた銃創の跡。
焼け焦げる臭いの中、兵士は笑いながらこの世を去った。
2
昇降口を固めていたβ隊は爆発音に動揺する。無論それはα隊から別れて裏を固めていた5名にも言えることだ。黒煙のあがる三階の校舎を見ながら、全隊を指揮する大佐に現状の指示を仰ぐ。
大佐は状況の説明を求めるが、爆発が起こったということ意外、要領を踏まえない隊員の報告に判断をつけれずにいた。
「…とりあえず、一番近い部隊をそちらに向かわす。レオパルド部隊の残りの人間は調査に入れ。」
相手の動揺にこちらが動揺してしまっては、不安に余計な拍車をかけることとなる。大佐は出来うるかぎり落ち着いて、自分の頭の中に浮かんだ最も無難な指示をレオパルド部隊に出した。
こちらの兵力は200。相手は上の情報だと総数でも400だという話しだが…。
兵力的にはこちらが上だろうが、これだけの広さを持つ都市に200。とてもじゃないが武が悪い。上に掛け合ってもこれ以上の増兵は望めないか…。
なにしろ表向きはこれは軍事制圧ではなく、バイオハザードに備えての更なる隔離、滅菌が任務だ。
ものものしい軍人を大量に投入出来るわけがない。
大佐は自分たちの置かれた状況にそう結論を出す。
「かといって任務を遂行出来ないと言うわけにもいかんしな」
独りごちると、隊を率いて再度侵攻を開始した。
*** *** ***
「はい。コレ。ツーさんの分ね。」
体育館の倉庫に逃げ込んでいたツーにRealは爆発の後から拝借してきた兵士の銃を手渡す。
「しかし…火薬も使わないで、よくこれだけの爆発が起こせたな。」
ツーはRealから銃を受け取りながら、倉庫の通気用の小さな窓から煙を上げる校舎を見て、そう呟いた。
「理科の実験だよ。…多分もう一回爆発が起こるからそのあと、逃げるよ。」
「それは裏口の兵士と一戦交えるということか?」
「…う〜ん。向こうも少なからず動揺してるはずだから、どっか抜け道ができるでしょ?」
そんな会話のやり取りをしながら、あらかじめ準備をしてあった抜け穴から、様子を窺う。
「控えてた兵士が中に入りだした。裏口も正面を固めてた連中も全員だ。今から10秒後に爆発させるからそのタイミング見て脱出してくれ。東からそっちに一部隊向かってるから西口の方に逃げろよ。」
電王からの報告がタイミング良く入る。
「一戦交えなくてもいいみたいだね。」
Realがそうツーに微笑みかけると。大きな爆発が起こった。今度は地面が震えるほどの大爆発だ。
「…これも理科の実験か?」
走りながらツーがそう訪ねる。
「これはガス爆発だよ。一階の部屋にガスを充満させて遠隔式の発火装置を電王が持ってるの。ここに来る途中に元栓開いてきたんだけど…勢い良く開きすぎたかな?」
初戦を白星で飾ったRealとツーは、そんな会話をしながら白煙立ち上る校舎を後にした。
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