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レオパルド部隊の壊滅の一報は一番近くを侵攻していたジャガー部隊から寄せられた。
相手が爆発物を所持していることは想定外だった。
報告を受けた他の部隊も明らかに動揺をしている。
自分たちの任務は隔離区域の感染者の更なる隔離が目的だったはずだ。確かに殲滅という言葉を含んだこの計画に違和感を感じなかったわけではない。
しかし、相手が武装集団であることを誰が想像していただろう。こちらは細菌対策用の防護服。防弾の装備もない状況。大佐は決断を迫られていた。このまま任務の真相を包み隠したまま侵攻するのか、全ての真実を告げるのか。
「…大佐!これは一体!?」
大佐の部隊の誰かが叫んだ。
「………」
しばらく目を閉じて沈黙をする大佐。そしてゆっくりと目を開くと言葉を紡いだ。
「…これから話すことは上層部の極秘事項となる。皆を信じこの真実を伝える。今後の判断は各々に任せる。」
そう最初に述べると、大佐はこの隔離区域で行われていた「人体実験」の全てを語り、ここの人間を秘密裏に収容、及び殺害することが本来の目的であることを語った。
「大佐…我々はどうしたら…」
全てを告げられた軍人達の一人がそう不安そうに言葉を漏らした。
「…各々の判断に任せると言ったはずだ。この侵攻に大義はない。彼らはこちらが攻撃しなければ戦う意志はないことを示していた。逃がすことも任務を遂行することも全て各個の判断に任せる。全責任は私が負う。心配するな。以上だ。」
そう言うと大佐は全体への発信をしていた回線を閉じた。
「各々の判断に任せるんッスね? ならやることは決まっている。」
大佐の隣にいた軍人がそう呟く。そして次の瞬間。
ダダッ。
不意に機関銃の発砲音。
「中尉…貴様っ。」
撃たれたのは大佐だった。中尉と呼んだ男を睨みつけ倒れる。手には機関銃。大佐はこの男に撃たれたのだ。近距離からの銃撃。倒れ込んだ大佐の胸元辺りから溢れ出した紅い液体はたちまち水溜まりを作る。
「俺達は戦争屋だ! やることなんて決まってる。あの戦争が戦争と呼べるものだったか? 隣国にて駐留待機。ただキャンプしに行っただけじゃねぇか!
俺達は銃持って敵をブチ殺すために軍隊に入ったんだ! 何が逃がすだ!? 殲滅って命令が出てんなら皆殺しだろ? いいか、これからウルフ隊は俺が指揮する。殺したくねぇとか、思ってるバカは俺が殺してやっから前へ出なっ!!」
中尉と呼ばれた男は捲し立てるようにそう叫ぶ、そんなことを言われて前に出る人間などいなかった。
「…全員、任務遂行の意志ありだな。良い心がけだ!よし、じゃあテメー。大佐の無線機ひっぺがして回線開け!」
そう言って手前にいた人間にそう銃口を振り回しながら指示をする。
命令された男はすぐさま中尉の命令に従い血溜まりの中で動かなくなった大佐の無線機を取り外し、操作しだした。
「回線繋がりました!」
「よし。なかなか早いじゃねぇか。よこせ。」
中尉は無線機を手に取ると全隊に向けて指示を出す。
「たった今、大佐が戦死された!相手は武装しこちらに交戦を仕掛けて来た!各隊、攻撃レベルをBからAAに切り替えろ!繰り返す!各隊、攻撃レベルをBからAAに切り替えろ!なお、今後の指示は私、ベイガー中尉が指揮をとる!
入り口包囲担当部隊!敵がこちらの情報を入手している可能性がある。指揮系統があるはずだ電波の発信源を特定しろ!こっちの回線も傍受されてる可能性もあるからプロテクトレベル上げとけ!いいか、これからは白兵戦になるぞ、敵がゼロになるまで徹底的に叩く!」
ベイガー中尉の指示のもと迷う事を拒絶されたウルフ部隊は更なる侵攻を開始した。
*** *** ***
「…敵さんが仲間割れしたみたいだ。誰かが一人撃たれて倒れてる。
今アップで見てみるが…。こいつは…敵の指揮官らしき人間が撃たれたみたいだ。」
電王はモニタを監視しながら各自に現状を報告する。
「それって、向こうさんの指揮系統が混乱してるってこと?こっちとしては歓迎ムードなんじゃないの?今、向こうの無線回線の電波拾おうとしてるんだけど…やっぱり戦時用だけあって、傍受しにくくなってるね…。」
電王の報告に解答したのはギーだ。
「…どーだろうな。とりあえず敵さんはまた侵攻しだした…。ギー、逆探知されると事だ。とりあえず無線傍受はやめとけ。敵の動きを伝える。敵主力部隊と思われる部隊はE-2地区進行中だ。Real達を負ってきた部隊はとりあえずこのまま南下するらしい。Realとツーはそのまま西口から地下に入ってF-5地点に移動してくれ。その辺で次の小隊とかち合う筈だ。」
電王はギーに無理をさせないように促し、そして各隊に冷静に指示を出した。
「今調度、西口前だよ。このまま地下に入る。しばらく電波が切れるが、無事に出れたらまた連絡を入れるよ。」
Realからの解答。
「大丈夫だ。敵はどの部隊もまだ地下には入ってない。」
「んじゃ、大丈夫だね。また後で。」
手短な返答の後、Real達の回線は途絶えた。
「ギー…今、何やってる?」
不意に、電王はギーにそう訪ねる。
「こっちは今んとこ特にやることないからね。強いて言えば座ってる。」
「ヒャハッ!こんな時にそんな冗談言えるなら大丈夫だな。お前に頼まれたい事があるんだけどいいか?」
「電王のお願いなんて、ぞっとしないね。…何?」
「敵さんの動きがちょっと複雑になってきたから、こっちはモニタリングに集中したいんだ。お前の方にデータを移すからそれをバックアップしてハードでもDVDでもいいから持ちだせるようにしといてくれ。俺達の真実が入ったデータだ。外に出たときの大切な証拠になる。」
「そんなん、こうなる前にやっときゃ良かったじゃん。」
「やってあるよ。こっちには、な。これは念の為だ。」
「ふーん。」
「んじゃ、今からデータ送っておくから頼むな。」
そう言うと、電王は会話を切った。
「さぁー。こっからが本番だ。」
今までは3分の1を他のシステムに割り当てていたモニタに隔離区域の中の映像が全て移しだされる。
トレードマークのゴーグルの位置を合わせると、電王は食い入るようにモニタリングを開始した。
軍隊が侵攻開始してから3時間程度が経過。第1ブロックを越えて次の区画に入ろうとしていた。
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