月の詩
十七歳隔離区域
第二十七章  「雑巾の命」
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軍隊の侵攻は第一ブロックを越え、第二ブロックへと進入を開始した。
数はおよそ200。この時点で敵である軍隊はその数を3分の1失ったこととなる。
十七歳達にとっては善戦といえる結果であった。

「敵一部隊がI-2地区に侵攻してきた。数はおよそ30。トラップで10人くらい脱落ってとこだ。敵の指揮系統が変わった所為か、全員さっきまでの侵攻とは違って武装状態を維持したままだ。気をつけろよ。」
電王からの支持が入る。
「わかりました。」
そう言って応答したのは、かつてツーの頼みに答え車を手配したチームのリーダーであった。
「敵がこちらに近づいているそうです。」
彼は穏やかにそう現状を伝える。
「こっちにも聞こえてたよ。ようやく戦争って感じになってきたみたいだな。」
そう応える男は頭に赤いバンダナを巻いていた。そう、彼はレッドキャップスの残党。ナンバー2だった存在だ。
Realに乗り込まれたレッドキャップスはヘッドが殺された後、実はRealと和平を結んでいた。実際の所はRealに恐怖したことが原因であったのだろうが、その真相はReal自信も「報復はない」としか語らなかったため明らかにはされていない。ただ一つ言えることはレッドキャップスがヘッドを筆頭に本当にイカレタ人間だったのでは無く、抑圧されていた集団であった。と言うことだろう。

「…まさかあなた方と手を組むことになるとは思いませんでしたよ。」
穏やかな口調の彼はそう微笑む。
「はっ。確かに俺達はここで好き勝手やってきたからな。あんたら穏健派には煙たい存在だったろーよ。」
レッドキャップスの男はそう言葉を返して子供のように笑った。
その会話の後、二人とも暫く文字通り「無邪気」に笑い合う。
「…さて、それじゃぁ、行きますか。」
穏やかな口調の彼がそう膝に手を着いて立ち上がる。
「…勘違いしてねーか?」
そう言うとレッドキャップスの男は不意に彼のみぞおちに拳を見舞う。
「な…。」
彼は腹を抱えその場に蹲った。
「…俺達は好き勝手し過ぎたからな。ツーの話しじゃ、ここの情報は筒抜けなんだろ?外に出たって豚箱に入れられるのがオチだってね。おたく等とは初めっから考え方が違うんだよ。」
「…貴様っ」
そう言葉を吐き、睨みつけるものの彼は激痛に耐えきれず意識を失った。

「よーし。おまえら出てきていいぞ!」
そう叫ぶと十数人の男が地下鉄の入り口から出てくる。みな一様に赤の帽子やバンダナを身に付けたものたちだ。
「敵はI-2だそうだ。派手に行くぞ!」
その言葉に雄叫びをあげるレッドキャップスの面々。
「あっ、そうだ。誰かそいつを見えないところに隠しておいてくれ。」
そう言って先刻、自分で殴り倒し伸ばした相手を匿うような言動をするレッドキャップスのナンバー2。
「ははっ。演技がヘッタクソだからいつバレるんじゃないかって冷や冷やもんでしたよ。」
笑いながらナンバー2の指示に従って彼を地下鉄入り口に運ぶ面々。
「うるせー!」
ナンバー2の男は照れを隠すように怒鳴り散らす。

「レッドキャップス!テメーらっ!!」
不意に電王から無線が入る。
「早いな。見てたのか?」
電王にそう問い掛けるレッドキャップスのナンバー2。
「どういうつもりだ!?」
しかし、電王はその問いには答えず、さらに質問を上乗せしてくる。レッドキャップスのナンバー2の男はそんな電王に動じることなく、別に自分の問いに答えてくれなくてもかまわないと言った様子で、電王の問いに答える。
「どういうつもりも、こういうつもりも、お前らのやり方はまどろっこしくていけねぇ。敵が武装強化してんだったら、どういう風に出てくるのか確認しとく必要があんだろーが。お前らのやり方じゃ、いつか後手後手になって手詰まりになるぞ?」
電王はその言葉に反論の言葉を失い沈黙する。
「俺達は今からI-2に移動して、一戦を交える。外からのアクションはまだ無いんだろ?ギーとお前で巧いこと編集して、ここの悲惨な現状を演出して外に発信しろよ。助けが来るかもしれないぜ?」
「…死ぬ気か?」
「そりゃ、相手の出方次第だな。だいたい、俺達は目茶苦茶やってきたんだ、外出たって自由はないだろ?仮にアイツ等の実験体にならずに済んだとしてもさ。
…雑巾には雑巾の役割ってのがあるんだよ。…しっかり使ってくれよ。雑巾の命。」
その言葉を最後に無線は切られた。

「…電王…」
切られた回線とは異なる回線から電王を呼ぶ声が入る。
「…聞いてたか?ギー。」
声の主に電王はそう問い掛けた。
「あぁ。」
「今、Realとツーは地下だ。連絡がつかない。彼奴等の結果次第では俺が現状を見て指示を切り替える。アシスト頼むぜ。」
電王はそう言ってギーの応えを待たずに回線を切った。

「それにしたってアンタ演技下手過ぎっすよ。」
「そうそう!最後までヒールだった方がカッケかったのにさー。」
「勝手に雑巾にされるし。」
移動しながら口々にナンバー2を野次るレッドキャップスの面々。
「うるせーよ。嫌なら着いて来んなっ!もともと頼んでもいねーんだしよ。」
野次にそう怒鳴り散らすナンバー2。
「何言ってんスか。祭りは多いほうが盛り上がるんすよ?」
「派手に行きましょーや!」
ナンバー2の言葉にそう言い返す面々。
「はっ!わかってんじゃねーか!…よーし、お前ら!行くぞ!!」
その言葉と共にレッドキャップスの一団はI-E地区へと駆けて行った。