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「…そう…うん。…うん…わかった。…そうだね。俺もそれがベストだと思うよ。…うん。じゃぁ、このままF-10地区に向かうね。」
地下から出た、Realとツーは定期連絡の為に電王に通信をしていた。そして電王から自分たちが地下にいた間に起こった出来事を、抑揚のない返事で聴きながら、わずかな会話のやり取りを終え、通信用の携帯電話をRealは切った。
「なにがあった?」
「…レッドキャプスが単独行動に出て…全滅しちゃったって。」
「…! あの無法者達が…っ!!勝手しやがって…!!」
Realに会話の内容を尋ねたツーはRealのその返答に激昂し強く拳を握りしめた。
「…いや…彼らには感謝しなくちゃだよ」
怒りを吐き出すツーを宥めるかのようにRealはそう言葉を紡ぐ。もちろん、当の本人はそんな相手の感情等考えた末の言葉ではなかったが、それでも発せられたRealの言葉はツーの怒りを抑える抑止効果となったのは事実だ。握りしめた拳を緩め、顎に手を添えて考え込むRealにツーはその先に続く言葉を求めた。
「どういうことだ?」
ツーの問いかけに目線を会わさず前を見据え、Realは解答する。
「…確信がなかったんだ。」
「…?」
要領を踏まえない返答、しかしこの先を待っていればRealはこちらが理解出来なかった内容を全て説明してくれる。ツーはRealのそういった所を理解していた。よって、言葉には疑問を出さず、あえてReal自身が口を動かすことを待った。案の定Realは続けて言葉を紡ぐ。
「…相手のね、出方に確信がなかったんだ。向こうが目的としているのが、本当に俺たちを「殺す」ことなのか、それとも「捕獲」することなのか…。正直これがどちらなのかわからないとなるとこの先、後手に回る可能性だってあった。だから…彼らには感謝しなくちゃなの。これで相手の出方が確実になった。予想が確信に変わったんだ」
「…なるほどな。相手がこっちの捕獲なら「生け捕り」がベストだからな。付け入るスキはいくらでもある…だがこちらを殺すことが目的ならこちらも最悪を想定して動けるという訳か」
Realの解答に要領を得たツーはそう理解した内容を付け加えて了解する。
「それだけじゃないよ。これで軍隊はこの隔離区域を作った団体とは別の意思で動いてるって可能性がより一層強くなった。この隔離区域を作った…この隔離区域で俺たちを研究したがっている人間たちのベストは「生け捕り」の筈だからね。それが「皆殺し」が目的となるとこの侵攻には別の意思が動いているって考える方が自然だよ。
…ってことは、隔離区域の研究者達は「観察」から「観戦」に切り替わったのかな?…それも考えにくいか。じゃあ、もう此処の研究自体破棄されたってことかな…もしそうならこっちに結構有利ってことになるのかも…」
途中から自分への解答ではなく完全に思考と同時進行の独り言と化したRealの言葉であったがツーはそんなRealが改めて凄いと思っていた。以前はこの人の一歩も二歩も先を読む思考が恐ろしく、畏怖の対象でしかなかったが、この切迫した状況下に置いても尚、彼の思考は支障を来すこともなく先へ進む。これ程心強いことはない。
ツーがそんな事を考えているうちに、Realは思考の整理を終えたらしく、再び携帯を取り出し無線で電王へと連絡を取る。
「…あ、電王? さっきの話なんだけど折角、レッドキャップスが狼煙を上げてくれたんだ。こっちも派手に行こう。向こうに動きを読まれる前に先手に出た方がいい。俺たちがセットした「打ち上げ花火」も着火していこう。向こう側がレッドキャプスの狼煙が合図だと思ってくれれば尚、好都合だしね。彼らの命を無駄にしない為にも。…うん。そうだねF-10の打ち上げ地点付近にみんなを集める指示出しておいて。急ごう」
そう口早に言うと無線を切り、ツーに「行こう」と先を即した。
ブービートラップの回避ルートを駆けながら、ツーは今一度Realに問う。
「…もうやるのか?」
「うん。向こう側の状態が研究グループの解体としたら、この隔離区域自体を破棄することが目的ってこともありうる。そうなると、軍人達の出方が「皆殺し」ってことも納得出来るでしょ?」
「あぁ…。それは解るが、「花火」はこちらの最後の手段だぞ?」
「だからだよ。向こうが戦術的に動いているなら、そろそろこの無線に気付かれるころかもしれない。もしジャミングされたら「花火」のスイッチが遠隔操作で起動出来なくなる。そうなったら完全にこっちは後手に回ることになるっしょ?
…そうなる前にやれることは全部やっておかないと。」
「…なるほどな。」
Realの解答にもう一度納得をするツー。「もし、上手く行かなかったら?」という疑問が新たに現れ脳裏をよぎったが、その疑問は言葉にせずに飲み込んだ。駄目な時のことなど考えたくはなかった。犠牲も出たこの戦いが自分たちにとって有利に働かなければならない。きっと上手く行く。きっと自由になれる。
よぎる不安をどこかえ追いやるかのように、ツーは呪詛のようにそう心の中で呟きRealと共にF-10地区への道を駆けた。
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